そのままのきみがすき
1、微笑みの王子とクールビューティー
 「既存の商品ページに関しては、こちらのデザイン案から選ばせていただきますね。来週中にはお返事出来ると思います。それと、新商品のウェブデザインに関してですが……」

 「まるっとボツ、ですか」

 打ち合わせ中のミーティングルームで、真山さんは綺麗な苦笑を浮かべ、少しだけハスキーな、それでいて滑らかな声で私の言葉を引き取った。


 ── 真山 冬哉(まやま とうや)さんは、私、椿 澄乃(つばき すみの)が入社して五年目になるお菓子メーカーシュリーレから、今秋に期間限定で発売されている栗を使ったチョコ菓子のパッケージデザインを請け負ってくれたデザイン制作会社の方だ。

 少数精鋭の会社で営業兼webデザイナーとして活躍している彼は今回、冬の新商品発売に向けてうちのサイトのリニューアルを担当してくれることになり、広報部側の担当となった私とはすでに何度目かの打ち合わせ。

 一年後輩の梨菜ちゃんによると、大手化粧品メーカーや飲料メーカーのサイトも彼が手掛けていて、彼の作ったものは常に話題となり数々の賞も受賞しているそうだ。

 「……いえ、まるっと、という訳ではないです。今回の新商品〝雪解けのチーズタルト〟に関しては、既存の温かみのあるデザインから一新したいと思っていて。なのでこちらのスタイリッシュなイメージをベースに、もう少しインパクト勝負に出たいというか……」
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