そのままのきみがすき
3、正体
 「いいリアクションをありがとうございます、椿さん」

 王子は艶麗な笑みで名乗った後、明らかに間抜けな顔になっているであろう私を見て、悪戯が成功した子供みたいな顔で笑った。

 一方、彼の正体を知って青ざめた私は咄嗟にぐるん!と回れ右をしたけれど。

 「ふは、お互いもうこの格好で何度も会ってるし、それは今更じゃないですか?」

 「……うっ……」

 揶揄いを含んだ声の彼にそう一刀両断されてしまえば、もはやぐうの音も出ない。

 そうなんだけど……!それはそうなんだけど……!

 それは、あくまでたまにしか遭遇しない赤の他人だったからこそ、お見苦しくてすみませんとは思いながらもこの姿を晒せていた訳で。

 だから赤の他人だと思っていた彼がまさかあの微笑みの王子で、今まさにがっつりと仕事で組んでいる相手で。

 そんな彼にすっぴんメガネに気の抜けた部屋着姿の干物化した私を晒しているとなれば、隠したいと思うのは当然の心理だということを分かってほしい……。

 例え、それが今更であったとしてもだ。

 っていうか、この人本当にあの王子なの……?

 何かちょっと、いや、かなりイメージ違いませんか⁉︎

 って、私も人のこと言えないんだけど!

 ……そうだよ、そもそもこの人なんで〝コレ〟があの椿だって分かったんだろう……⁉︎

 しかもいつから気付いて……⁉︎
< 13 / 49 >

この作品をシェア

pagetop