そのままのきみがすき
１０、数ヶ月後
　年が明けて一月下旬。

　雪解けのチーズタルトが発売され、プロモーションの効果もあって売れ行きは好調。webサイトの方もデザイン性が高く評価されており、コンテンツ面を充実させた従来商品のページ、Flashムービーを使用した子供から大人まで楽しめる新商品のページ共に評判も良く、アクセス数も順調に伸びていた。

　あれから私たちは、曜日関係なくお互いの家で穏やかな時間を重ねていた。

　寒さが一段と厳しかった今日は私の家のこたつで寄せ鍋を囲んでいたのだけど、なぜか今、私は冬哉さんにぎゅうぎゅうと抱きしめられている。

　「頑張ったね、澄乃」

　実は先日、展示会関連の関西への出張に梨菜ちゃんと一泊二日で行った時、部屋がツインだったのもあり、私は思い切って彼女にこの気の抜けたオフの姿を明かしてみたのだ。　

　戦闘能力ゼロのこの姿を後輩に晒すのはかなり勇気がいったけれど、出張前に「この姿は澄乃が見せたいと思う人に見せたらいいよ」と優しい笑顔で後押ししてくれた彼のおかげで、一つ殻を破ることができた。

　そんな私の姿を梨菜ちゃんはえらくお気に召したようで、

　『何ですか、そのゆるキャラみたいな可愛さ……！ギャップ萌えですね⁉︎私、澄乃さんに推し変します！』

　とまで言い出すから笑ってしまった。こんなに簡単に受け入れてもらえるなんて拍子抜けだったけれど、それからホテルで夜通し語り明かした私たちは、随分と仲良くなったと思う。

　お鍋をつつきながらその報告をしたところ、労いのハグをいただいてしまったという訳だ。

　「でも、ついに澄乃のこの可愛い姿を知るのがオレだけじゃなくなっちゃったか」

　「……寂しい？」

　その声にほんの少し切なさが滲んでいるような気がしてもぞもぞと腕の中から彼を見上げれば、メガネの奥の瞳が右目の泣きぼくろと一緒に一層柔らかく垂れた。
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