魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

11.不安定な未来 -promise-

 ハンガーに吊られ、虹色のグラデーションを描いて並ぶ多彩なドレスの数々。
 立派なトルソーに飾られた、貴金属仕立ての豪華なネックレス。
 宝飾店のショーケースにも劣らない大粒の宝石群が、シャンデリアの灯りにキラキラと瞬いて、水面に反射する光のようにきらきらとその存在をアピールしてくる。

 しかし今見える範囲のそれすら、このボースウィン家の所蔵品の一部に過ぎないのだ。
 ハクスリンゲン家のコレクションなどとは一線を画した、もはや宝物庫――それが、案内された大衣裳部屋を訪れて一目で抱いた感想だった。

「ささ、お姉様。着たい衣装があれば、いくらでも言いつけてくださいませね!」
「何でも好きなのをくれてやるから、せいぜい楽しんでけ。んじゃ、俺も適当に着替えてくっか……また後でな」
「ちょっ……」

 スレイバート様はそう言うと、扉の側に控えていた男性使用人の元へ向かい……にっこりと両肩を掴んだテレサが部屋の中を案内してくれる。

「いいのかしら、こんな時に……」
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