魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

14.ルシド・ネプティル

 その後順調に怪我人の救出は進み、戦いの音も日暮れ前には完全に鳴り止んでいた。

「この度は街の危機に駆け付けてくれ、感謝する……。君たちの働きがなければ街は滅びていてもおかしくはなかった」

 今、私たちは町長を務めるルシドさんの父親の屋敷で、お話を聞いている。
 この方はボースウィン領に広く支店を構える、大きな商会の会長でもあるらしい。育ての親ということでルシドとはまったく容姿が違うのだけど、話していて、優しそうな雰囲気は一緒に暮らすうちに受け継がれたものなのかなと思った。

「ルシド、お前もよくやってくれたな。父親として誇らしいぞ。テレサ嬢も本来ならば直ちに城に避難される身でありながら、勇敢にも同行し、多くの怪我人を治療してくださったそうで」
「いえ、私なんて。それよりも今回の功労者はやっぱりシルウィーお姉様です。あの恐ろしい量の瘴気を取り払ったからこそ、こんなにも早く魔物を倒し切ることができたんですから!」

 ぐいと私の肩を押して突き出したテレサに、ルシドも同意する。

「そうですね。あわやというところもありましたけれど、正直、シルウィー様が行動してくれなければ、他から救援が来るまで間に合わなかったでしょう」
「お、大げさよふたりとも……」
< 139 / 737 >

この作品をシェア

pagetop