魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
第二部
1.新たな暮らし -magic gem shop-
「う~ん……」
年を越し、冬も過ぎ去りつつある今日この頃。
私は外に出ると、胸いっぱいに朝の空気を吸い込んだ。
まだ辺りにはちらほら雪が溶け残っていて寒々しいけれど、それでも瘴気がずいぶん薄くなったおかげで、こうして深く身体の奥まで空気を行き渡らせるととても気持ちがいい。
ちなみに――ここはあのボースウィン城ではなく、レーフェルの街に佇むなんの変哲もない一軒家だ。
「さあ、そろそろ準備しなきゃ」
私はぐいと背筋を伸ばした後、気持ちを引き締めて扉を開き、建物の内側へと入っていく。
おっと、忘れないように扉の表看板を【開店中】にひっくり返しておかないと。
中では、ついさっき薪をくべた暖炉がぱちぱちと威勢のいい音を立てており、独特の薫りと共に少しずつ店内は温まりつつある。
一軒家とはいったものの、実はここはお店でもある。一階の表半分には簡素な接客スペースが設けられており、裏側と二階は人が暮らせるようになっている。私は現在ここに住まわせてもらい、なんと……あるお仕事を任されているのだ。
年を越し、冬も過ぎ去りつつある今日この頃。
私は外に出ると、胸いっぱいに朝の空気を吸い込んだ。
まだ辺りにはちらほら雪が溶け残っていて寒々しいけれど、それでも瘴気がずいぶん薄くなったおかげで、こうして深く身体の奥まで空気を行き渡らせるととても気持ちがいい。
ちなみに――ここはあのボースウィン城ではなく、レーフェルの街に佇むなんの変哲もない一軒家だ。
「さあ、そろそろ準備しなきゃ」
私はぐいと背筋を伸ばした後、気持ちを引き締めて扉を開き、建物の内側へと入っていく。
おっと、忘れないように扉の表看板を【開店中】にひっくり返しておかないと。
中では、ついさっき薪をくべた暖炉がぱちぱちと威勢のいい音を立てており、独特の薫りと共に少しずつ店内は温まりつつある。
一軒家とはいったものの、実はここはお店でもある。一階の表半分には簡素な接客スペースが設けられており、裏側と二階は人が暮らせるようになっている。私は現在ここに住まわせてもらい、なんと……あるお仕事を任されているのだ。