魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

3.英雄が守りし村 -celebrity-

「本当に、噂に違わぬお力でした、聖女様。それに、こんなにお安く魔石を譲っていただけるなんて、村としても本当に助かります」
「せ、聖女だなんて……。とにかく、喜んでいただけたようで、よかったです」

 目の前で、穏やかそうなご婦人に頭を下げられた私は、ぎこちない笑みで応える。

 サンクリィの村に着いた私たちは、この村のまとめ役をしているという女性の元に伺い、彼女に案内された場所で早速瘴気の除去を行った後、運んできた魔石をいくつか買い取ってもらったところだ。

 それほど大きな村ではないが、定期的に馬車が行き来し、送り届けられたたくさんの旅人たちで賑わっている。ルシドの話だと観光地だというし、それが大きな収入源となっているのだろう。村のあちこちに魔法の力を利用した利水設備や、緊急用の結界装置なども備えており、暮らし向きは中々よさそうだ。

「いやー聖女様、お見事でした。あなた様なら安心してボースウィン領のこの先を委ねられますな!」
「公爵様とのご結婚は、いつ頃の予定なんですか!? 聖女様!」
「あ……それは、その……色々ありまして(聖女とかそんなご立派なのじゃ、ないんだけどな……)」

 まとめ役の女性に村を案内されていると、興奮気味の村人たちに声を掛けられ、まだ婚約に関してはどうなるか分からないなどとも言えず、ごにょごにょとお茶を濁す私。隣でルシドも苦笑いをしている。
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