魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

4.精霊の棲む湖 -white snow-

 例の湖までは、村から小一時間ほど歩くという。
 ルシドと並び、道中の景色を楽しみながら歩いていると、徐々に道幅は狭まり、木々の立ち並ぶ林道へと差し掛かってくる。

「この辺りは、足場が少し悪いですから、気を付けてくださいね」
「わきゃっ!」
「――っと、遅かったですね」

 言った傍から足を踏み外し、体勢を崩した私をルシドはすぐさま腕を掴んで引き上げてくれる。
 レーフェルの街でこないだ買った街歩き用の靴なのだが、こういったでこぼこ道を歩くのには適していなかったみたい。まだこの辺りはちらほら雪が積もっているから、なおさらだ。

「うぅ、ごめんね……」
「大丈夫ですよ。足でも捻られたらちょっとまずいですけど。背中に負ぶられて戻るのは、シルウィー様も嫌でしょう?」
「うっ……そうね」

 子どもじゃあるまいし、そんなみっともない姿で、聖女だとか騒がれていた村の中を通って戻るとか、考えただけでもぞっとする。

「さあどうぞ。そんなことになったら、スレイバート様もテレサ様から、僕もお仕置きされちゃいますし」
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