魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

5.ペンダントと少年 -memento-

 ぱち……ぱち……。

 なにかが弾けるような音に私がうっすらと目を開けると、オレンジ色の揺らぎが目に入った。これは……ああ、焚火か。

「ん……」

 ほんのりと木の焦げる匂いに鼻をひくつかせながら私が身体を起こすと、そこは土の上だった。どうやら、直に地面の上に引いた布の上に寝かされていたらしい。

「これ、ルシドの……?」

 ボースウィン領騎士団の証、銀雪に映える涼やかな薄青色のマントを下に敷いていたのだと気付いた私は、目を擦りながら辺りをゆっくりと見回す。

 光源は焚火しかなく薄暗い。立ち上がれば頭が着いてしまいそうな狭いの空間の壁面は、白いもので覆われていて、触れると指先が濡れ出す。どうやら雪のようだ。

「お姉ちゃん、起きたんだね。よかった……」
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