魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
6.スレイバートの怒り -uncontrollable-
遠目からでもよく目立つ、銀の髪の公爵様の姿が店の玄関口に寄りかかっているのが見えて。
着き次第すぐに馬車から降りた私たちは彼の元に走り寄る。
「ス、スレイバート様! もしかして、帰りを待ってくださっていたんですか!? すみません、ちょっと事情があって遅くなってしまって……」
「怪我は?」
「えっ……? どこも……」
虚をつかれた私は両手を広げてみせるが、彼はぶっきらぼうに私の腕を引き寄せ、じろじろと無遠慮に眺め出した。そして納得したのか私の肩を軽く押して突き放す。
よろけて後ずさりながらも、初めて私は彼に対して怖い、という感情を抱いた。
本気の怒り――それが身体から発散されているのが分かるほど、彼は苛立ちを露わにしている。
「申し訳ありません……。騎士たちから、兄の方に連絡が行ってしまって」
「ううん……それは仕方ないけど」
控えていたテレサの小声に生返事で返しながら、私は呆然と隣をすり抜けていくスレイバート様を見ていた。
着き次第すぐに馬車から降りた私たちは彼の元に走り寄る。
「ス、スレイバート様! もしかして、帰りを待ってくださっていたんですか!? すみません、ちょっと事情があって遅くなってしまって……」
「怪我は?」
「えっ……? どこも……」
虚をつかれた私は両手を広げてみせるが、彼はぶっきらぼうに私の腕を引き寄せ、じろじろと無遠慮に眺め出した。そして納得したのか私の肩を軽く押して突き放す。
よろけて後ずさりながらも、初めて私は彼に対して怖い、という感情を抱いた。
本気の怒り――それが身体から発散されているのが分かるほど、彼は苛立ちを露わにしている。
「申し訳ありません……。騎士たちから、兄の方に連絡が行ってしまって」
「ううん……それは仕方ないけど」
控えていたテレサの小声に生返事で返しながら、私は呆然と隣をすり抜けていくスレイバート様を見ていた。