魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

8.初めてのピクニック -true meaning-

 それから一週間程の時間が経過したが、今もまだ、私はレーフェルの街には戻れていない。
 代わりに、本日は待ち望んでいた機会が――そう、クラウスさんの用意してくれたスレイバート様との和解の場が、ついに訪れることとなった。

 それは、屋外でのお食事会並びに懇親会。平たく言えば、ピクニック。
 ボースウィン城の郊外にある高台で、いい眺めを楽しみながら私たちの仲を深めよう、ということになったのである。

「わ……もうこんなに花が咲き始めているのね!」
「いい天気になってよかったですわね、シルウィーお姉様」

 馬車を降りて草地に一歩踏み出せば、芽吹き始めた草花たちが出迎えてくれる。

 急速に近づいて来た春の陽気のおかげで、日中は大分過ごしやすくなった。冬の名残だった雪もほとんど溶け切って、世界が一気に静寂の銀世界から命溢れる大自然へと移り替わっていく、狭間の時。

(ここって……もしかして)

 しばらく周囲を見渡していて思い出した。この小高い丘は、私が初めて瘴気を取り込んだ、あの村に行く前立ち寄った休憩地点に違いない。
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