魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

10.仲間がいるから -hold hands-

 訓練試合の翌日、私の姿はレーフェルの街に向かう馬車の中にあった。
 これから途中で二、三の村落に立ち寄って、瘴気を吸収した後に、魔石店へと戻る予定だ。

 ちなみに私たちがお城に留まっている間、店の方はテレサが定期的に様子を見に行ってくれていたらしく、商品用の魔石の在庫が尽きてしまった以外には、大きな問題は起きていない様子。

 しかし、やっと待ち望んでいた帰還の日だというのに、私は沈んだ表情を隠せておらず、同乗していたルシドが心配して声を掛けてくれた。

「あ、あの。シルウィー様。どうかなさったんですか?」
「…………え? ああ……ううん、なんでもないの。それより、あなたの方こそ、怪我は大丈夫?」

 テレサからの治療を受けたとはいえ、まだ昨日の傷は完全には治っていない。打ち身の跡や巻かれた包帯が痛々しく、それを指摘するも、彼はこのくらいよくあることだからと笑っていた。

「私の付き合いでごめんなさい。こんな時くらい、護衛の任を解かれてゆっくりしたいでしょうに」
「いえいえ、その方が僕としてはがっかりしますよ。そんなことよりシルウィー様こそ、あまり無理せず向こうでもしっかり休んで、気分転換されてください」
「……ありがとう。でも今は身体を動かしていたいの」
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