魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
12.老侯爵の宴 -past-
「ほら、足元に気を付けろ」
「は、はい」
履き慣れない綺麗な靴の裏が地面に付いて、やっと私はほっとした。馬車から降りるときに裾の広いドレスを着ていると、たとえ男性に手を支えられていても結構気をつかう。
「なに中途半端に離れてんだ。もっとくっつけ」
「あ、はい。このくらいで?」
「もっとだ」
「で、では……」
少し位置を離して立っていた私の手がスレイバート様に掴まれ、強引に彼の肘辺りに添えられた。そうして私たちは、目の前に立つ立派なお屋敷の玄関口に向かって歩いてゆく。
本日訪れたこちらは、このボースウィン領の最北端――もっとも隣国と近い土地を預かっている、クリム・イシュボア侯爵という人物のお屋敷だ。
「は、はい」
履き慣れない綺麗な靴の裏が地面に付いて、やっと私はほっとした。馬車から降りるときに裾の広いドレスを着ていると、たとえ男性に手を支えられていても結構気をつかう。
「なに中途半端に離れてんだ。もっとくっつけ」
「あ、はい。このくらいで?」
「もっとだ」
「で、では……」
少し位置を離して立っていた私の手がスレイバート様に掴まれ、強引に彼の肘辺りに添えられた。そうして私たちは、目の前に立つ立派なお屋敷の玄関口に向かって歩いてゆく。
本日訪れたこちらは、このボースウィン領の最北端――もっとも隣国と近い土地を預かっている、クリム・イシュボア侯爵という人物のお屋敷だ。