魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
15.招かれざる客 -invader-
「その口調だと、貴様はボースウィン公爵麾下の騎士か? そこをどけ。今なら先程の発言は見逃してやろう。我が時間は雑魚に割いてやれるほど安くはない」
皇太子様のブーツが、足元を強く踏みにじった。
前を塞ぐルシドを指差し苛立ちを露にする彼の後ろでは、よくよく見れば、精霊教団の巫女であるヴェロニカの姿もあり、その口元には蔑みの笑いが浮かんでいる。わざわざ、私が彼に引っ立てられるところを眺めに来たとするなら、あまりにも悪趣味が過ぎる。
皇族としての威厳と身体から立ち昇る強大な魔力を前に、それだけで普通の人間なら自ら道を譲っていただろう。
しかし、ルシドは私の前から退こうとはせずに跪くと、勇敢にも意見を述べた。
「皇太子様直々のご来訪とは露知らず……まことに失礼いたしました。ですが、私もスレイバート様から、シルウィー様のご安全を託された身。このまますんなりとお引渡しする訳には参りません。どうか、本日は一度お戻りになられまして、我が主と直接会談の場を設けられることを、帝国の下に集う臣の一人として進言させていただきます」
礼節を弁えながら、暴挙とも取れる行動を諫めようとするルシドの言葉だったが、それに対し皇太子が見せたのは婚約破棄の時と同じ、あの厭らしい笑みだった。
皇太子様のブーツが、足元を強く踏みにじった。
前を塞ぐルシドを指差し苛立ちを露にする彼の後ろでは、よくよく見れば、精霊教団の巫女であるヴェロニカの姿もあり、その口元には蔑みの笑いが浮かんでいる。わざわざ、私が彼に引っ立てられるところを眺めに来たとするなら、あまりにも悪趣味が過ぎる。
皇族としての威厳と身体から立ち昇る強大な魔力を前に、それだけで普通の人間なら自ら道を譲っていただろう。
しかし、ルシドは私の前から退こうとはせずに跪くと、勇敢にも意見を述べた。
「皇太子様直々のご来訪とは露知らず……まことに失礼いたしました。ですが、私もスレイバート様から、シルウィー様のご安全を託された身。このまますんなりとお引渡しする訳には参りません。どうか、本日は一度お戻りになられまして、我が主と直接会談の場を設けられることを、帝国の下に集う臣の一人として進言させていただきます」
礼節を弁えながら、暴挙とも取れる行動を諫めようとするルシドの言葉だったが、それに対し皇太子が見せたのは婚約破棄の時と同じ、あの厭らしい笑みだった。