魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

17.若き騎士の旅路 -someday again-

 山並みの間から姿を現したオレンジ色の太陽が大地を照らし出すと、前に立つ人々の姿がくっきりと見えてきた。

 今は早朝。ボースウィン城の正門の前では、数十人の旅装を纏った騎士たちが装備や目的地までの順路、馬の状態の確認で忙しく行き来し声を掛け合う。

 それを見つめるボースウィン家の兄妹と私の視線の先には――。

「皆さん……これまで本当にお世話になりました。感謝の言葉もありません」

 これまで……ボースウィン領の平和を支え、私の命の危機を幾度も救ってくれた大切な友人……ルシド・ネプティルの姿があった。

 彼が目と鼻の先までやってくると、スレイバート様とテレサは一歩踏み出し、それぞれ別れの言葉を掛ける。

「お互い様ってやつだろ。俺たちだって苦しい時……お前にはずいぶん助けられたからな」
「まあお兄様、素直にこちらこそありがとうって言えばよろしいのに……。でも残念だわ……本当に戻ってしまうのね、あちらの国へ」

 スレイバート様はやや不満そうに、そしてテレサはいつもの可憐な声に少しだけ寂しさを滲ませながら笑いかけ……そんな彼らの姿を私は後ろから見つめている。
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