魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
第三部

1. 夢にまで見た力 -leap-

「もう一度だ!」
「――はいっ!」

 荒れた剥き出しの大地に吹き荒ぶ風を受けながら――。
 整えてもらい、やや軽くなった背中までのロングヘアをはためかせ、その日の私は険しい視線で前方を見つめていた。

 ここは、ラッフェンハイムという帝国の北の辺境、ボースウィン領にあるお城の訓練場の一角。そこで私――こと没落予定の侯爵令嬢シルウィー・ハクスリンゲンが何をしているのかというと……。

「制御を緩めんな! もっと、分散しちまう魔力を魔法の中心に引き寄せろ! 完成まで視線は対象物に固定! 実戦では一瞬の心の乱れが、魔法の成否を左右し勝敗を分けると思え!」
(集中……とにかく集中!)

 厳しい叱咤が飛び、突き出した私の両腕に力が籠る。
 そして視界の奥にある藁人形に向けて、広げた両の掌をぐっと畳むように握り込む。次第に……人形の表面が、粉を拭いたように白いもので覆われ、そして次第に周りを忽然と生まれた雪の層が覆い出した。

「くうぅぅぅ~~~……」
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