魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
2.誕生日 -I don't know-
「――ああ、そういや。もうすぐテレサの誕生日じゃねーか……忘れるとこだった」
スレイバート様のそんな一言により、興味を引き寄せられた私とクラウスさんははたと顔を上げる。ちょうど執務室で、三人で書き仕事を片付けていた時のことである。
クラウスさんがぱらぱらと手早く暦をめくると、そうだったそうだったと何度も頷く。
「でしたねぇ。近年はスレイバート様が臥せっていたおかげで大っぴらに祝うことはできませんでしたが、今年こそは、盛大に城を挙げて祝福して差し上げませんと……!」
「俺が悪かったみたいに言うんじゃねえ……。で、なんで今年に限って思い出さなかった? いつもならお前の方から言ってきてたじゃねーか」
「あ~……」
不満げな半眼で睨むスレイバート様にクラウスさんは、万年筆の頭でこめかみをぐりぐりと押した後、思い付いたようにぽんと手を叩いた。
「そうだ……! いつもならひと月も前になれば、テレサ様宛の誕生日プレゼントが大量に届いていたではないですか! そのエルマ様の贈り物が、今年は来ていないんですよね」
スレイバート様のそんな一言により、興味を引き寄せられた私とクラウスさんははたと顔を上げる。ちょうど執務室で、三人で書き仕事を片付けていた時のことである。
クラウスさんがぱらぱらと手早く暦をめくると、そうだったそうだったと何度も頷く。
「でしたねぇ。近年はスレイバート様が臥せっていたおかげで大っぴらに祝うことはできませんでしたが、今年こそは、盛大に城を挙げて祝福して差し上げませんと……!」
「俺が悪かったみたいに言うんじゃねえ……。で、なんで今年に限って思い出さなかった? いつもならお前の方から言ってきてたじゃねーか」
「あ~……」
不満げな半眼で睨むスレイバート様にクラウスさんは、万年筆の頭でこめかみをぐりぐりと押した後、思い付いたようにぽんと手を叩いた。
「そうだ……! いつもならひと月も前になれば、テレサ様宛の誕生日プレゼントが大量に届いていたではないですか! そのエルマ様の贈り物が、今年は来ていないんですよね」