魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

6.婚前なのに!? -shock-

 ボースウィン城はひっそりとしてまるで廃墟のようだ。王城に匹敵する広さに思えるのに、これだけ歩いても誰かと出くわすということがないなんて。

 私の緊張をほぐしてくれようとしたのか、手に燭台を持つテレサ様が肩越しに、困り気味に詫びた。

「申し訳ありません、今、城内は強い瘴気に包まれていまして。私達、魔法士のような限られた人間しか出入りすることは叶わないのです。そのせいでご不自由をおかけしますが……ご気分はいかがです? 体調が悪くなったりは?」
「いえ、特には……」

 さいわい、魔法の使えない身ではあるが、私の身体には他の魔法士たちと同じように瘴気に耐性があるみたいだ。

 聞けば帝国内にはいくつかこういった土地があるらしく、ボースウィン領では近年になってから被害がどんどん大きくなってきているのだとか。

 そのせいで、今城で生活していられる人間は限られた数しかおらず、テレサ様たちも身の回りのことを自分でしなければならない様子。よく見れば、指先には令嬢という身分にそぐわない手荒れが目についた。そんな状況でもこうして令嬢としての気品や誇りを失わないことには、心から尊敬する。

 城内のいくつかの部屋を案内された後、私たちは建物上部の一室に辿り着き、そこでテレサ様が振り返る。
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