魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

6.誘蛾灯 -false hope-

【被疑者名――ラルフ・リュドベルク】

【容疑内容――複数個所での器物損壊、及び殺人未遂】

【以下、参考人の供述によるが――当該の人物は昨日、ボースウィン領内ミレッザの街内部にて、現在ボースウィン家預かりとなっているシルウィー・ハクスリンゲン嬢を襲撃。護衛騎士数名に怪我を負わせ、公序良俗を大きく乱した上で取り押さえられた。なお、彼には先日イシュボア侯爵統治区に所在を置くクリム・イシュボア侯爵邸にて、ここでもシルウィー嬢の殺害を狙って騒ぎを起こした嫌疑がかけられ、この件についても詳しい調査を必要とする――】

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 翌日、そんな内容の調書が置かれたテーブルの前では、身体中を鍵付きの鎖で縛られた上、椅子に座らされた赤髪の青年の姿があった。

「今すぐこれを外しやがれ……! オレは、その女を殺さなきゃいけねえんだっ!」

 がしゃがしゃと騒がしい音を立てながら、絶賛取り調べられ中の青年が怒鳴る。
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