魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

7.ラルフ・リュドベリク

 オレは……今でも自分のことを貴族だなんて思えちゃいない。
 生まれてからしばらくは、姓すら持たない、ただのラルフというガキでしかなかったからだ。
 その根っこの部分は、この先いつまで経っても変わることはないだろう。

 赤い髪ばかりが派手に目立つ、野良犬みてえに汚ねえ孤児。
 そんなオレがこのリュドベルクという姓をもらったのは……クソみてーな境遇から抜け出すことになった、ある夏の日――……。



 両親の顔は知らない。家族と言えるのは、顔立ちも身体つきも何も似ていない、同じ院で生活する兄弟たちだけだ。
 リュドベルク領の東の外れにある貧民街のしけた孤児院……。物心ついた頃から、オレはそこにいた。

『ラルフ! またクソガキどもを騒がせたね! いつもこちらから話しかけない時は、一言も口を利くなと教育してあるだろうが!』
『ご、ごめん、院長……でも』
『口答えするなッ!』

 室内にひどい鞭の音が響き渡る。
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