魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

8.怒りの制裁 -confluent-


 その後は私たちも知っている通り……ボースウィン領に潜入して情報を集め、魔道具の力でイシュボア侯爵の屋敷に忍び込むと、聖女の命を狙ったのだ――彼はそう語り、私はクラウスさんと顔を見合わせた。

「ふん……時系列が滅茶苦茶ですね。シルウィー様がボースウィン領に現れたのは、呪いが領地を包み込んだずっと後ですよ? そもそも先代がそれに掛かったのは彼女が生まれてすらない時だ。そんな与太話を素直に信じるなど、軽挙妄動が過ぎる!」

 憤慨するクラウスさんを宥めつつ、私は悔しそうに俯くラルフさんを見つめた。

 少し調べてもらえばわかることだが……きっとそれほどまでにカヤさんはひどい状態で、ラルフさんに余裕はなかったのだろう。他に妹さんを救う方法が見つかっていれば……。

「親父たちは……妹を見捨てやがった! そして俺が向こうを出てくる際には、もう領地に魔物の被害が広がり始めてたんだ! 全部、全部てめえのせいなんだろ、黒髪の聖女? そうだって言えよ……でないと、てめえが呪いを解かないと俺の妹が助からねえんだ! 苦しむだけ苦しんで、この世から消えちまう! なんにもいいことがなかったのに……そんなの、許せるかよ‼」

 再び暴れ出そうとするラルフさんを兵士たちが取り押さえる中、私はじっと彼の目を見て語り掛ける。
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