魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
9.バカは死んでも治らない -naive-
ミレッザの街でスレイバートがシルウィーのもとへ合流した頃……ラッフェンハイム皇宮でもまた、この男が怒りを露わにしていた。
「く……そおおぉっ! 今になっても許せぬ……たかが公爵風情がこの次期皇帝たる私に、二度も土をつけるなどおぉっ!」
自室で振るった腕が、血税を消費して用意された貴重な皿や工芸品を遠慮なく破壊してゆく。国民の数百人が一年は働かずに暮らしていけるであろう財産が、ただの癇癪で塵に変わる。
それを見ていたヴェロニカは、なんの感傷も抱かない瞳でソファに背を預けると、冷笑を浮かべた。これがこの巨大帝国を将来率いていこうという為政者の姿か……そんな嘲りが口元には表れている。
しかし、あまりにも耳障りに思ったのか、彼女は蕩けるような声で皇太子に制止を呼び掛けた。
「どうか……お鎮まりくださいませんか、ディオニヒト様。先の決闘で後れを取りましたものの、あれはシルウィーが魔力を奪い取っていたせいですもの。卑劣なのは、皇太子様がお力を失ったところを狙って、横合いから勝負に割り込んだボースウィン公爵の方でありましょう? 完全に対等な条件で戦っていれば、あなた様は揺るがぬ勝利を手にしていたはず」
歌うような賛美の言葉を聞き、皇太子の表情がにやけた半笑いへと変わってゆく。
「く……そおおぉっ! 今になっても許せぬ……たかが公爵風情がこの次期皇帝たる私に、二度も土をつけるなどおぉっ!」
自室で振るった腕が、血税を消費して用意された貴重な皿や工芸品を遠慮なく破壊してゆく。国民の数百人が一年は働かずに暮らしていけるであろう財産が、ただの癇癪で塵に変わる。
それを見ていたヴェロニカは、なんの感傷も抱かない瞳でソファに背を預けると、冷笑を浮かべた。これがこの巨大帝国を将来率いていこうという為政者の姿か……そんな嘲りが口元には表れている。
しかし、あまりにも耳障りに思ったのか、彼女は蕩けるような声で皇太子に制止を呼び掛けた。
「どうか……お鎮まりくださいませんか、ディオニヒト様。先の決闘で後れを取りましたものの、あれはシルウィーが魔力を奪い取っていたせいですもの。卑劣なのは、皇太子様がお力を失ったところを狙って、横合いから勝負に割り込んだボースウィン公爵の方でありましょう? 完全に対等な条件で戦っていれば、あなた様は揺るがぬ勝利を手にしていたはず」
歌うような賛美の言葉を聞き、皇太子の表情がにやけた半笑いへと変わってゆく。