魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

10.悲しみの帰郷 -forfeit-

 西の方角。領境に近づくにつれ、空の色がどんどんと暗くなってゆく。
 それに私たちは懐かしさと不吉さを感じ、知らされた内容が真実であるのだと呑み込まざるを得なかった。

 現在、私たちはスレイバート様が連れてきたボースウィン領騎士団の一部隊とともに、現在緊急事態に陥っているという、リュドベルク領へと向かっている。

 ラルフさんへの怒りがようやく収まった後、スレイバート様は自身がどうしてミレッザにまで駆け付けたのかを手早く教えてくれた。

 私たちの出発と入れ違いになる形で、城へ報告が届いたのだそうだ。
 リュドベルク領内各地で、原因不明の大規模な瘴気騒ぎが起き――隣領のこととはいえ見過ごせない状況になっていると。



 以降が、ラルフさんが意識を失った後の、取調室でのやり取りだ。

『――伝令兵の話によると……一週間ほど前、いきなりリュドベルク城周辺が恐ろしいほどの瘴気で包まれ、魔物たちに急襲されたらしい。それだけじゃなく、領内全域の村落でも同様の被害が発生し、今あっちはどこもかしこも蜂の巣を突いたような騒ぎになってるそうだ』
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