魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

7.テレサ・ボースウィン

 初めてスレイバート様ときちんと対面したのち、いきなり迫られ、目前から逃亡するという衝撃の顔合わせから数日……。
 あてがわれたボースウィン城の一室で、バルコニーに立った私は曇り空を眺めていた。

 瘴気が陽を遮っているのだろう。この辺りの天気はまったく晴れず、空の色がいつも変わらない。話を聞いたところ、数年前からこちらでは、こうした被害が続いているのだそうだ。
 
うっすらと暗いこんな空を見ていても、気分は晴れないどころか落ち込む一方。

「こんなにも覚悟が足りてなかったのね……」

 そして自分にもがっかりだ。婚約破棄された時には、もうどうなっても仕方ないと思っていたくせ、身体が求められると知って急に恐ろしくなった。

 経験がないため、どうしてどうなって子供ができる――という具体的な想像が浮かばないためか、お相手があんな綺麗な男性であろうと、こんなにも怖気づいている。

「私……こんなに弱かったんだ」
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