魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

12.エルマ・ボースウィン

 それからすぐのこと。
 エルハルトさんの生存に続いて二つ目の、私たちにとってとても嬉しい報せが舞い込んできた。

 街中を歩く途中で、なんと……テレサの母君エルマ様と出くわしたのだ。

「あら、あなたたちこんなとこでなにしてんのよ」
「お母様っ!」
「エルマのおばさん⁉」

 涙をぶわっと浮かべたテレサが、一目散に豊かな胸をした金髪の美女目掛けて飛び込んでいく。妙齢の美女は持っていた大きな紙袋を落として娘をしかと抱き止めた。

「……スレイバート、あたくしのことは名前だけで呼ぶように伝えたはずよね? それに、テレサをこんな時に連れてきて……」

 兄失格だという視線でエルマ様はきっとスレイバート様を睨み付け、一瞬やべっ、という顔をした彼は面倒くさそうに……しかしずいぶんほっとした様子で言い直した。

「はいはい、エルマな。相変わらず若作りがお上手なことで安心したが……。やっぱあんたもこっちに避難してきたのか?」
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