魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

13.輝く夜に -beautiful things-

 その後もエルマ様に乞われてテレサと一緒に働きつつ日は暮れてゆき、夜が訪れた。

 簡単な配給食を夕食とした後、エルマ様はテレサを連れ、戻って来たスレイバート様を出迎えた私に告げた。

「悪いけど、お部屋の数もあまり残ってないのよ。テレサはあたくしの部屋に泊めるから、あなたたちはふたりでそっちの部屋を使ってちょうだい。婚約者なんだし、緊急時だからいいでしょ? それじゃあ、また明日ね」
「――はぁ!? おいっ、お前らの部屋にこいつも――。ったく、あのおばさんは……」

 さっさとテレサの肩を抱いて消えたエルマ様に舌打ちしつつ、仏頂面になったスレイバート様はこちらを向くと閉口した。

「まあ、我慢しろ。婚約前だし、嫌がる女に手を付ける趣味なんてねー。さっさと寝ちまえばいつもと変わんねえから。ほら……明日もどうせ早いんだから、とっとと休むぞ」
「は、はぁ……」
「お前はそっちを使え」

 こちらはエルマ様にお借りしたカーディガンに薄い寝間着姿で、まじまじと見られると恥ずかしい。

 戸惑いがちな私を押し込むと、スレイバート様は気にせずに肩を鳴らして、ベッドのサイドボードで手紙を書き始めた。クラウスさんに送る連絡の類だろうか。
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