魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

14.失われたとしても -fortitude-

 翌朝、私たちはあまり多くの人に事情を明かさずセイムルークの街を発つことにした。

 引き連れて来た部隊の信頼できる騎士たちに後のことを任せると、各方面への手紙を残し、スレイバート様とともに、必要な物資を積み込んだ馬車で密かに街を出ようとしたのだったが――。

「やっぱりこんなことだろうと思ったわ」

 蓋を開けてみれば、しっかりと街の出口でエルマ様に待ち構えられていた。

「昨夜は遅くまで長いこと話し込んでたみたいだったし、なにかあるんだとは思ってたけど。……あなたたち、もしかして、リュドベルク城に行くつもりなんじゃないでしょうね?」
「そうだ」

 私が車内から御者台へ移動すると、そちらで馬を操っていたスレイバート様が堅い顔で即答した。

 エルマ様は、昨日は見せなかった子どもたちの無茶を諫めるような顔でこちらを見ている。
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