魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
2.シルウィー・ハクスリンゲン
私、シルウィーは十七年前、このハクスリンゲン侯爵家の長女として生まれた。
あの父ゴディアと、母マルグリットの間の第一子として。
男でないことを父は大いに悔しがったらしいけれど、それも私の魔力量を測定するまでだった。
帝国では魔力持ちの人間は非常に珍重される。だってたとえば、風を操って空を舞ったり、土を操って一夜で見事な城を完成させたりと――人によるが、おおむね常人に不可能なことを成し遂げるんだもの。有効活用したいと考えるのは当たり前だと思う。
そして、私は魔力をとりわけ多く持って生まれた。それも母が賢者と言われるほどの稀代の魔法士だったからだ。帝国最強の魔法士として持てはやされた彼女は、基本的な地水火風四属性の魔法をすべて強力な出力で扱えたという。
それは並みの魔法士には決してできないこと。大抵の魔法士は自身の持つ魔力をひとつかふたつの属性にしか変えられない。それに、得意な属性の魔法を満足に操れるようになるだけで、才能ある人間でも途方もない時間を費やさなくてはならないのだから。
けれどもちろん、魔法士がいるのはこの国だけじゃない。他国にも優れた魔法士は存在して、国同士の争いに魔法が使われることもままある。そんな時、母は各地に赴き、自らの魔力を振り絞って国を守ったらしい。他にも、教えを乞うものには余すことなく自分の知識を伝えたりして、おかげで帝国はおおいに発展し、名を聞けば諸国が震え上がるほどの魔法大国へと成り上がったんだとか。
あの父ゴディアと、母マルグリットの間の第一子として。
男でないことを父は大いに悔しがったらしいけれど、それも私の魔力量を測定するまでだった。
帝国では魔力持ちの人間は非常に珍重される。だってたとえば、風を操って空を舞ったり、土を操って一夜で見事な城を完成させたりと――人によるが、おおむね常人に不可能なことを成し遂げるんだもの。有効活用したいと考えるのは当たり前だと思う。
そして、私は魔力をとりわけ多く持って生まれた。それも母が賢者と言われるほどの稀代の魔法士だったからだ。帝国最強の魔法士として持てはやされた彼女は、基本的な地水火風四属性の魔法をすべて強力な出力で扱えたという。
それは並みの魔法士には決してできないこと。大抵の魔法士は自身の持つ魔力をひとつかふたつの属性にしか変えられない。それに、得意な属性の魔法を満足に操れるようになるだけで、才能ある人間でも途方もない時間を費やさなくてはならないのだから。
けれどもちろん、魔法士がいるのはこの国だけじゃない。他国にも優れた魔法士は存在して、国同士の争いに魔法が使われることもままある。そんな時、母は各地に赴き、自らの魔力を振り絞って国を守ったらしい。他にも、教えを乞うものには余すことなく自分の知識を伝えたりして、おかげで帝国はおおいに発展し、名を聞けば諸国が震え上がるほどの魔法大国へと成り上がったんだとか。