魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

15.食卓を囲もう -party!-

 幸いなことに、ラルフさんはリュドベルク領内を走る街道について熟知していた。将来カヤさんをあちこちに連れ歩くために、騎士達の任務に同行したりと色々と勉強したらしい。

 魔物の生息地などについても詳しい情報が頭に入っており、そのおかげでしばらくは、比較的強力な魔物とは出くわさず、体力を温存して進むことができそうだ。

 重量を軽減する魔法の補助具が馬車に取りつけられているとはいえ、馬たちを一日中駆けさせて潰してしまうわけにもいかない。途中の休憩として、ある集落へと立ち寄った私達は、周囲の瘴気を吸い込んで魔物たちを片付けた後、街の宿で休息を取ることになった。

「うっし……馬の調子も悪くねえし、このままなら後二日もありゃ城には着けるだろ。俺はこいつらの世話だけしておくから、先に中に入ってな」
「手慣れてますね……。あの、私もなにかお手伝いを。あっ……」

 着くなり外した馬を小屋の方に連れて行くラルフさんの後ろを追おうとすると、スレイバート様が私の腕をむんずと掴む。

「ほっとけ、あれはあいつの仕事だ。んで主人、悪いなこんな時に。休む部屋だけでも借りられると助かる」
「いえいえ。皆さんのおかげで、しばらくはこの地を安心して見届けられます。せめて、食事のもてなしくらいはさせてください」
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