魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

17.変わり果てた象徴 -trample-

「――っと待てよ……。な、なんなんだよ、ありゃ」

 目的地を目前にして、ラルフさんが呆気に取られたその気持ちはよく分かる。

 私たちがお城の影だと思って見つめていたもの――それは近付くにつれて鮮明さを増し、その一帯がありえない状態に陥っていることを私たちに教えてきた。

「あそこで、間違いねえんだろうな」
「ああ……。あれが、リュドベルク城のはずだ。俺は、ここで育つ花をカヤに毎日、届けてやってたんだ。それが、全部……くそっ!」

 ラルフさんが、瘴気で茶色く変色してしまった花を、悔しそうに握りしめる。

 たった今、リュドベルク城の近辺に到着した私達は、まずは様子を窺おうと、お城を一望できる高台に立ち寄ったところだった。しかし……見ての通りだ。

 周囲の植物は、強い瘴気の影響を受けたのだろう。ほとんどが枯れ落ちて地面を汚し……死を思わせるひどい世界を形作っている。
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