魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
19.糸引く者との対峙 -wicked-
黒いローブの人物が女性であることはすぐに分かった。
だが、身を包むその衣装がずいぶんゆったりとしていることと、そして目深に被ったフードのせいで、何者かはよく分からない。妙な魔法や魔道具でも使っているのか、声からも人物は特定できそうになかった。
そんないかにも妖しげな侵入者に噛みついたのはラルフさんだ。
「てめえなのか! 結局、てめえが……カヤをこんな風にしやがったのか!」
「あら……私は確かに、その後ろのボースウィン領の聖女がこの事態の元凶であると申し上げたはずですが……?」
どうやら、彼女こそがラルフさんに私の殺害を指示した人物のようだ。
苛烈な怒声にも一切臆すことなくせせら笑う女性に対し、立ち上がったラルフさんは猛然と糾弾し始めた。
「黙れ! シルウィー様がそんなことをするはずがないのはもう分かってんだよ! この人はこんな危険を冒してまで、妹の呪いを解くためにやってきてくれたんだ! オレたちの恐怖を煽るだけ煽って姿を消したてめえみてえな胡散くせえやつとは違う! どうせ、てめえがカヤに呪いを植え付け、この領地を滅茶苦茶にしようと画策したんだろうが! 妹を……もとに戻しやがれぇっ!」
我慢ならないというように、たちまち彼は両手に火炎を宿すと女性へと突撃していった。
だが、身を包むその衣装がずいぶんゆったりとしていることと、そして目深に被ったフードのせいで、何者かはよく分からない。妙な魔法や魔道具でも使っているのか、声からも人物は特定できそうになかった。
そんないかにも妖しげな侵入者に噛みついたのはラルフさんだ。
「てめえなのか! 結局、てめえが……カヤをこんな風にしやがったのか!」
「あら……私は確かに、その後ろのボースウィン領の聖女がこの事態の元凶であると申し上げたはずですが……?」
どうやら、彼女こそがラルフさんに私の殺害を指示した人物のようだ。
苛烈な怒声にも一切臆すことなくせせら笑う女性に対し、立ち上がったラルフさんは猛然と糾弾し始めた。
「黙れ! シルウィー様がそんなことをするはずがないのはもう分かってんだよ! この人はこんな危険を冒してまで、妹の呪いを解くためにやってきてくれたんだ! オレたちの恐怖を煽るだけ煽って姿を消したてめえみてえな胡散くせえやつとは違う! どうせ、てめえがカヤに呪いを植え付け、この領地を滅茶苦茶にしようと画策したんだろうが! 妹を……もとに戻しやがれぇっ!」
我慢ならないというように、たちまち彼は両手に火炎を宿すと女性へと突撃していった。