魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

21.ずっと一緒に -my family-

「よいしょっと。今日はこの辺りにしようかな」

 時は正午。すっきりと気持ちのいい空に浮かぶ真っ白な綿雲が、目にも眩しい。

 ボースウィン城の屋上にある物見台に上ってきた私は、借りてきた蝋燭立てを倒したりしないよう慎重に台の上へ固定すると……南西の方向を向き、やや距離を置いて集中し始めた。

 手のひらを突き出し、慎重に魔力をそちらに向けて放射していく。

 火の魔法なら導火線を伸ばすイメージが一番しっくりくるか。でも、ただ単に火が付けばいいというわけじゃなく、ちゃんと火力は一定に維持できていないといけない。今行っているのは、魔法に使う魔力量を適切に制御するための訓練なのだから……。

 しかし、どうして屋外の訓練場ではなくわざわざこんな場所で、ということなのだが……それは城門を通る人の姿がはっきりと見えるから。
 もうすぐ、スレイバート様たちがリュドベルク領から帰ってくる。それを真っ先に出迎えたいという一心からの行動なのだった。



 ――リュドベルク城での事件が解決し、深い眠りについた後……私はかなり長い間そのまま起きなかったらしい。
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