魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
第四部

1.婚約指輪を求めて -in my heart-

 時は四月の初め。リュドベルク領を包んだ大変な騒動から一週間ほどが経った。

 そんな中、こちらのボースウィン城では私のみならず、そわそわする内心を隠し切れずに、浮かれた気分を持て余している人たちが、あちこちで見かけられる。

(ふふっ……皆忙しそうにしてるけど、でもすごく楽しそう……!)

 もちろん、リュドベルク領に支援に向かっていた我らがボースウィン公爵スレイバート様の無事のご帰還があったこともあるけれど、それだけではなくて……。
 原因は来たるべき三日後に控えた、あるとても素晴らしいイベントの開催だ。

 ――テレサ・ボースウィン公爵令嬢の生誕記念祝賀会。つまりは誕生日パーティー。

 昨年まではスレイバート様が病に伏し、領内の状況も芳しくなかったため大っぴらに祝うということはできなかったらしいが、今回は違う。

 この地を統べる領主の完全復活。そしてテレサが十六歳という、ラッフェンハイム帝国で法的に成人だと認められる年齢に達するという事実。それらによる領民達の盛り上がりは筆舌に尽くしがたく、どこもかしこも気合の入りようからして違う。
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