拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
第九章 今さら助けてくれと言われても困ります
バナージから招待を受けたあと、フィーヌはかれらにギャフンと言わせるための下準備を始めた。
「ねえ、ヴァル。ダイナー領で埋蔵量が少ない金鉱山はどこかしら?」
「うーん。こことここのあたりかな」
ヴァルは腕を組んで、フィーヌの広げた地図を指さす。
「じゃあ、逆に埋蔵量が多いところは?」
「それはここ。断トツだよ」
ヴァルは迷うことなく一点を指さす。
それはダイナー公爵領でも特に辺鄙で〝何もない場所〟という言葉がぴったりの場所だった。
「フィーヌ、何を企んでるんだ?」
ヴァルは興味津々の様子で目を輝かせる。
「まあ、ヴァル。企んでるだなんて人聞きが悪いわ。ただ、バナージ様からお屋敷に招待されたから、金鉱脈を教えてほしいって言われると思って」
「ふーん。じゃあ、ここを教えるといいよ。半年くらいで掘りつくすと思うけど」
ヴァルは先ほど教えてくれた、埋蔵量の一番少ない場所──リリト金山とナルト金山の中間地点を指さした。
「ありがとう、助かるわ」
「任せとけ。地面をカチコチにしておいてやるよ」