拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく

エピローグ

エピローグ

【ヴィラ歴425年3月】

 紅茶を片手に新聞記事を確認するのはフィーヌの日課だ。
 事業を行っている以上世の中の流れを知ることは最低限行うべきことだし、辺境伯夫人という立場上、辺境の地域に住んでいる関係で王都の情報にどうしても疎くなってしまうので、新聞は貴重な情報源のひとつなのだ。

「あら」

 フィーヌは競売情報の欄に目を留める。

「どうした?」

 フィーヌの声に気付いたホークが、彼女を見る。
 
「ダイナー公爵家が所有している土地の所有権を売るようです」
「入札するのか?」
「ええ、そうしようかと」

 フィーヌはにこりと微笑む。

 借金で首が回らなくなっているダイナー公爵家はここ最近、持っている土地の所有権を次々と売りに出していた。
 
 今日の新聞に売りに出されている土地はダイナー公爵領の中でも特に辺鄙な場所で、競売しても二束三文にしかならないだろう。しかし、その地下には大きな金鉱脈があり、その埋蔵量はダイナー公爵領最大の金山であったリリト金山に匹敵する。
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