拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
第二章 辺境伯に求婚されました
舞踏会の翌日。フィーヌは妹のレイナと共に父であるショット侯爵の執務室に呼び出された。
執務用の椅子に腰かけるショット侯爵と向き合って、フィーヌとレイナは立つ。ショット侯爵が手に持っているのは上質な書簡で、赤い封蝋にはダイナー公爵家の家紋が入っている。
「フィーヌ。これはどういうことか、説明しなさい」
ショット侯爵は、静かにフィーヌに問いかける。
「わたくしはお姉さまを止めたんです! でも、邪魔するなとわたくしの手を振り払って休憩室に──」
聞かれてもいないのに先に口を開いたのはレイナだった。
わざとらしく肩を揺らし、事実と異なることを熱弁している。
「それは事実なのか、フィーヌ?」
ショット侯爵は険しい顔でフィーヌを見つめる。
「事実ではありません。わたくしはレイナにドレスの後ろがみだれているから休憩室で直すように勧められ、休憩室に行きました。しばらくすると、あの場で別の方と待ち合わせしていらしたロサイダー卿がいらしたのです」
「別の方?」
「バナージ様です」
フィーヌが言い終わるや否や、「ひどいわ!」と声が響く。