拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
第四章 ロサイダー領での生活
【ヴィラ歴421年10月】
ロサイダー家に嫁いで最初の一カ月は、屋敷の人達の顔を覚えたり女主人としての仕事を覚えたりするので精いっぱいだったフィーヌも、段々と新しい生活に慣れてきた。
そしてこの日、昼下がりの執務室でフィーヌは帳簿を眺めながら頭を悩ませていた。
豊かとはいえないロサイダー領のために何かできないかと早速検討を始めのだが、早くも壁にぶつかってしまったのだ。
「もう少し、税収を増やせないかしら……」
ロサイダー辺境伯家の領地には目だった産業がない。巨大な軍を抱えているから維持費がかかるのに、軍は地方税が免除になっているので税収に繋がっていないのだ。
その上、目だった産業もなければ特段肥沃な大地でもない。財政が厳しくなるのは必然だった。
「うーん、今の一番の収入源は、国境の通行税──」
その通行税も隣国との情勢がよくなかったせいで大した額になっていない。
財政健全化するために取るべき対策は大きく分けてふたつだ。
ひとつは支出を減らすこと。もうひとつは収入を増やすこと。
しかし、支出面においては軍事予算が支出の多くを占めるロサイダー領においてなかなか削るが難しい。一方、収入のほうも産業がなく取れる場所がない。なお、税率を上げることは領民の生活に直結するため現時点では考えていない。
(何か、産業の柱が必要だわ)
土地はあるのだ。何かしらの産業を軌道に乗せれば大きな税収に繋がるはず。
(ただこの帳簿、何か引っかかるのよね)
何が引っかかるのかはっきり言えないのだが、なんとなく違和感を覚えた。
最初は数字がおかしいのかと思ったが、計算は間違っていない。
(きっと気のせいね)
フィーヌはうーんと考える。
新しい産業の柱と言われても、なかなか名案が思い付かない。
(気分転換に散歩でも行こうかしら)
ロサイダー家に嫁いで最初の一カ月は、屋敷の人達の顔を覚えたり女主人としての仕事を覚えたりするので精いっぱいだったフィーヌも、段々と新しい生活に慣れてきた。
そしてこの日、昼下がりの執務室でフィーヌは帳簿を眺めながら頭を悩ませていた。
豊かとはいえないロサイダー領のために何かできないかと早速検討を始めのだが、早くも壁にぶつかってしまったのだ。
「もう少し、税収を増やせないかしら……」
ロサイダー辺境伯家の領地には目だった産業がない。巨大な軍を抱えているから維持費がかかるのに、軍は地方税が免除になっているので税収に繋がっていないのだ。
その上、目だった産業もなければ特段肥沃な大地でもない。財政が厳しくなるのは必然だった。
「うーん、今の一番の収入源は、国境の通行税──」
その通行税も隣国との情勢がよくなかったせいで大した額になっていない。
財政健全化するために取るべき対策は大きく分けてふたつだ。
ひとつは支出を減らすこと。もうひとつは収入を増やすこと。
しかし、支出面においては軍事予算が支出の多くを占めるロサイダー領においてなかなか削るが難しい。一方、収入のほうも産業がなく取れる場所がない。なお、税率を上げることは領民の生活に直結するため現時点では考えていない。
(何か、産業の柱が必要だわ)
土地はあるのだ。何かしらの産業を軌道に乗せれば大きな税収に繋がるはず。
(ただこの帳簿、何か引っかかるのよね)
何が引っかかるのかはっきり言えないのだが、なんとなく違和感を覚えた。
最初は数字がおかしいのかと思ったが、計算は間違っていない。
(きっと気のせいね)
フィーヌはうーんと考える。
新しい産業の柱と言われても、なかなか名案が思い付かない。
(気分転換に散歩でも行こうかしら)