一途な陸上自衛官は、運命が引き寄せた恋を守り抜く〜秘密の双子ごと愛されています〜
10、夢のような現実
今年は梅雨明けが早く、夏の始まりも例年に比べ早かったのもあり、九月に入ると猛暑は一気に落ち着いた。
まだ三十度を超える日はあるけれど、子どもたちも心配なく外で遊べるようになってひと安心だ。
「やだ、もうこんな時間。もうそろそろいらっしゃるわね」
「うん……お母さん、ごめんね」
慌ただしく動く母に、申し訳なさが募る。
「希穂が謝ることじゃないでしょ」
夏の旅行中、慰霊碑の前で勇信さんと偶然再会を果たしたと母と姉に打ち明けた。
旅行中は私自身も混乱していて言い出せず、気持ちが落ち着いて少し経ってから切り出した。
私同様、たまたま偶然そんな場所で再会したなんて信じられないといった様子だった。
その後、勇信さんとはまた連絡を取り合うようになり、毎日なんらかのメッセージを送ってきてくれる。
今日は子どもたちと一緒に会う約束をしていて、うちに迎えに来たときに母に挨拶したいと勇信さんから申し出があった。
「支度は終わったの?」
「あと、ふたりに靴下履かせるだけ」
陸と海はリビングで追いかけっこをしている。今日は朝から出かけるのが楽しみで、ふたりともテンションが高い。
さっきから「ママ、まだー?」と出発を今か今かと待ちわびている。