一途な陸上自衛官は、運命が引き寄せた恋を守り抜く〜秘密の双子ごと愛されています〜
12、心穏やかに、そして強く


 東京に出てきて一か月。

 街路樹も色づき始める十一月初旬。


「ママー! みてみて! すごいおっきなくるまがある!」


 今日は、陸と海を連れて練馬駐屯地を訪れている。

 一般開放のイチョウ祭りという創設イベントで、防災イベントと同様に駐屯地内で様々なものが催されているのだ。

 子どもたちが、勇信さんの仕事について興味を持ち始めたのをきっかけに、一度一般公開のイベントを見にくるといいと言ってくれた。

 子どもたちは今日を楽しみにしていて、昨日の晩はなかなか寝付かなかったくらいだ。

 私にとっても数年ぶりの駐屯地。

 最後に訪れたのはこの子たちの妊娠が発覚する直前、ボイラー点検で訪れたときだった。

 当時と変わらないこの場所を歩きながら、あのときのことを振り返る。切なさも込み上げてきたけれど、それよりなにより再び勇信さんと結ばれた幸せが今は大きい。


「すごいね。パパはこれに乗ったりもしてるんだよ」


 初めて見る自衛隊車両に足を止めて見入る子どもたち。自分のパパが乗っていると知ると目を丸くして「すごーい!」と歓声を上げた。


「希穂さーん!」


 子どもたちと戦闘機を見て回っていたときだった。後方から聞き覚えのある声に名前を呼ばれて振り返る。

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