一途な陸上自衛官は、運命が引き寄せた恋を守り抜く〜秘密の双子ごと愛されています〜
Side Yuushin
年に数度行われる駐屯地の施設公開、駐屯地祭。毎年九月には防災にちなんだ一般公開のイベントを開催している。
ここ数年は九月でも真夏のような酷暑日もあるが、今日も涼しいとは言えない真夏日に近い気温だ。
そんな中でも多くの来場者があり、朝からイベントは盛り上がりをみせている。
地元民から子ども連れの家族、常連の自衛隊ファンなど多くの人々で賑わっている。
「砂羽一尉!」
後方からひと際威勢のいい声で呼びかけられ、足を止めて振り返る。
姿勢よく足早にやってきたのは、木佐貫一等陸士。
今年から入隊したまだ十代というフレッシュな新人。高校卒業と共に自衛官に入隊した志のある男だ。
所属する第一普通科連隊の直属の部下となり、たまたま出身地が町まで地元が同じだったことを知り特別気に掛けるようになった。
話をしていくと家庭環境からなかなかの苦労人だということも知り、より応援したいという気持ちも入ったのだと思う。
今日は地元から一緒に上京してきたという彼の高校時代からの彼女も顔を見せている。
「どうした」
「今少し前、言付けを頼まれまして」
「言付け?」
木佐貫が茶色の紙袋を差し出す。
「先日、豪雨の際に地下鉄で親子を助けていた女性です。砂羽一尉がとなりの駅まで送られた」
そう言われて思わず「え?」と声が出ていた。
まさか、冴島さんが……?