初恋のやり直し ~過去に私をふった彼からの猛アタック~
05 やり直した初恋の行方
 私のことが好きだと言い放った彼に、私自身は驚きと困惑で、すぐには何も言い返せなかった。
 きっと蒼士くんから見た私は、随分と間抜けな顔をしていたように思う。それくらい動揺してしまって、そこからのことは私も何を話したのか記憶になかった。

 気付いたら借りているマンションの扉の前にいて、放心状態で鍵穴に鍵を差し込んでいる。
 そこから暫く何もしないままぼーっと突っ立ってしまっていて、エレベーターホールから人が歩いてくる気配がして慌てて部屋の中に入った。

「びっくりした……」

 いまだに彼からの告白が現実とは思えなくて、パンプスを脱ぎ、のろのろと廊下を進む。
 IDKの小さな部屋は年甲斐もなく可愛い動物や果物モチーフのファンシーな小物で溢れていて、今はそれが少しだけうるさく感じた。
 
 ――なんだか気持ちが落ち着かない……。

 ベッドの下にどさっと鞄を置き、着替えも化粧も落とさず、ベッドに倒れ込む。
 改めて先ほどのことを思い出して、頬がじわじわと熱くなった。

『綾音のことが好きだからだよ』

 そう、蒼士くんに言われたとき、呼吸が止まりそうになった。
 だって、過去に好きだった人から告白されたのだ。どういう真意があるにせよ、心がぐらついてしまうのは仕方ないと思う。
 ただ、もし彼が本気なのだとしたら、過去の私に言ってほしかった。
 なんで彼はいまさら、私のことを好きになったのだろう。

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