初恋のやり直し ~過去に私をふった彼からの猛アタック~
06 妹のままにしないで
 蒼士くんと正式に付き合い始めて一か月。
 職場では元々幼馴染だったこと、距離感が近かったこともあって、周りからは特に関係性を怪しまれることなく過ごしていた。仲が良すぎる先輩と後輩に見られているようで、仕事も順調にこなしている。
 付き合っていることがバレてしまってもいいけれど、騒ぎ立てられても困ってしまうため、いずれバレるときがきたら正直に話そうと蒼士くんとは決めている。

 友人である美菜にも蒼士くんと付き合い始めたことを報告したら、最初こそ驚いていたものの、過去に私からの告白を断った経緯を聞いてからは、むしろ彼に対しての株が上がった。
 誠実で優しそうないい人だと言ってくれて、お付き合いできたことを祝福してくれた。
 
 そうして私たちの交際は順調かに思われたが、私の中で新たな悩みが生まれた。

 ――蒼士くんと、全然進展しない……!

 どうも遠慮があるからなのか、蒼士くんとは一か月経っても、高校生のようなピュアな恋愛を続けている。
 夜のお誘いはおろか、キスをしたことすらないのだ。
 もしかしたら、まだ私のことを妹だと思っているのかもしれない。それか、兄の顔がちらついてしまうのかも。

 今日も蒼士くんとデートをしているけれど、彼は私と手を繋ぐのですら躊躇う節があった。

「私、魅力ないのかな……」

 可愛い動物のお土産が並ぶ棚の前でぽつりと零せば、近くにいた蒼士くんがどうした? と声をかけてくれる。

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