初夜に暗殺された王女は魔獣の国で再起する~魔獣の国の王の求愛がとまりません
13.不穏な報せ
キルギアの冬は長い。
その冬があけて、五月になると魔力なしでも雪が解け始める。そしてようやく小さな花が咲き、新緑の季節が過ぎるとつかの間の夏がやってくる。七月になると夏を祝って王城では舞踏会が開かれる。

一年前は国王が死去して間もなくだったため舞踏会は当然のことながら中止された。
だが、今年は新しい国王が順調に国を統治してくれているため、舞踏会が開催されることになったと、貴族たちは沸き立っている。

先王を殺したナダル王国が落ち着き、やっと足を長くして眠れるのだと。
そして舞踏会が開けるのだと。

街のドレスショップがにぎわいだしたのは六月に入ったころだ。
仕立て屋は大急ぎで帝国から生地を輸入しはじめた。

「一番豪華な仕立てにするんだ。侮られてはならないぞ」

デュランダルは王城ご用達の仕立て屋を呼び、自分とシェリアの舞踏会の衣装について打合せを行っていた。

ペアの衣装にするつもりだ。
他の誰もが納得するようなカップルにならなくては。

「では、陛下。この濃紺のサテンなどはいかがでしょう?今帝国ではサテンが流行りですし、濃紺であればお二人の髪色のどちらにも映えます」

「それにしよう」

おおむね決まってきた。

と、そこへラインハルトがやってきた。

「陛下。至急の案件で申し訳ございません。メルディスが帰ってきました」

「そうか。何かあったのか?」

「それが…」

言いにくそうにしたのでデュランダルは切り上げることにした。

「ではよろしく頼むぞ」

「はっ」
< 215 / 283 >

この作品をシェア

pagetop