甘恋、ひとさじ。~和菓子屋の娘はホテル王に囲われています~
第一章
王道の夏の和菓子といえば、寒天を使った水ようかんや水まんじゅうにくずきりなどだ。見た目にも涼を感じながらつるんとしたのど越しを楽しめる。
太陽がまぶしく輝きだす七月――。
「小春ちゃん、この間の葛まんじゅうおいしかったわぁ、だからまた買いに来たのよ」
「ありがとうございます。来週あたりに店主が新商品出すって張り切ってるから、そのときはまたよろしくお願いしますね」
「ええ、また来るわ」
東京の下町で私の父方の祖父母が経営する〝浅見屋〟は、純和風の風情ある瓦屋根で、店先には筆文字で浅見屋と書かれた濃い紫色の暖簾が揺らいでいる。私以外の従業員はいない小さなお店でも、地元の人に親しまれて数十年。この界隈では老舗の和菓子屋として名が知れている。けれど、ここ最近は洋菓子ブームなのかめっきりお客さんも減ってきた。
来客も一日十人来るか来ないかで、うちほとんどは常連客だ。しかも店は大通りではなく裏路地に面していて立地的にもあまりよくない。実質経営は火の車だ。そんな生活の中、もし私の両親が生きていたらまた違った人生を歩んでいたのかもしれない……なんてふと思うときがある。けれど全然苦でもなく、私はむしろこの経営を何とかしようと毎日楽しんでいる。
両親が突然事故で亡くなったのは私が十八歳のとき。
太陽がまぶしく輝きだす七月――。
「小春ちゃん、この間の葛まんじゅうおいしかったわぁ、だからまた買いに来たのよ」
「ありがとうございます。来週あたりに店主が新商品出すって張り切ってるから、そのときはまたよろしくお願いしますね」
「ええ、また来るわ」
東京の下町で私の父方の祖父母が経営する〝浅見屋〟は、純和風の風情ある瓦屋根で、店先には筆文字で浅見屋と書かれた濃い紫色の暖簾が揺らいでいる。私以外の従業員はいない小さなお店でも、地元の人に親しまれて数十年。この界隈では老舗の和菓子屋として名が知れている。けれど、ここ最近は洋菓子ブームなのかめっきりお客さんも減ってきた。
来客も一日十人来るか来ないかで、うちほとんどは常連客だ。しかも店は大通りではなく裏路地に面していて立地的にもあまりよくない。実質経営は火の車だ。そんな生活の中、もし私の両親が生きていたらまた違った人生を歩んでいたのかもしれない……なんてふと思うときがある。けれど全然苦でもなく、私はむしろこの経営を何とかしようと毎日楽しんでいる。
両親が突然事故で亡くなったのは私が十八歳のとき。
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