甘恋、ひとさじ。~和菓子屋の娘はホテル王に囲われています~

第二章

銀座は言わずと知れた名所が点在し、有名百貨店や高級ブランド店、様々なジャンルの飲食店が立ち並び多くの人を魅了し続ける大人の街。

私はこの日が来るのを指折り数え、パーティーに着ていくドレスもクリーニングに出して準備した。初夏の季節に合わせて裾がふわっ、と広がるライトブルーのマーメードラインワンピースで、スカート部分にはスパンコールがきらめいている。私のお気に入りの一張羅だ。

このドレスも親戚の結婚式以来だな……。

私は普段、滅多に華やかな場所へは行かない。だから今日は朝からそわそわして落ち着かなかった。ホテルに行くまで着てきた普段着の入った荷物をクロークに預けキョロキョロと見回す。

芽衣、もう来てるかな?

腕時計を見るとちょうど十九時。

髪の毛をアップにしてパールのネックレスとピアスを身に着け、緊張した面持ちで芽衣と待ち合わせているロビーへやって来た。

それにしてもすごいホテルね……。

ホテルのエントランスにはまず光の滝のような大きな噴水があって、待ち合わせスポットになっているようだ。ところどころに観賞植物が置かれていて、きらびやかな中にも自然と調和した雰囲気が醸し出されている。緊張しているのにどことなくひと息おけるのはリラックス効果があるのかもしれない。ピカピカに磨かれた乳白色の大理石の床もまるで鏡のようだ。
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