甘恋、ひとさじ。~和菓子屋の娘はホテル王に囲われています~

第五章

ここ数日、高城さんの帰りが遅い。夕ご飯を用意して待っていても、急な仕事が入って結局ひとりで食事をするなんてこともしばしばだ。高城さんは新しいプロジェクト発足の関係で全国を奔走している。CEOたるものどんなに忙しくても視察はこまめに、会議には必ず出席し、そんな仕事をしているときの彼の凛々しい姿を想像するとキュンと胸がときめいて、寂しさもいっときは吹き飛ばせる。

はぁ、でもこう毎日のようにひとりだと気が滅入るときもあるよね……。

高城さんは今夜も出張で帰ってこないため、ひとりでどうしようか考えていたら芽衣から「飲みに行こう!」と仕事終わりに電話がかかって来た。なんてタイミングのいい友人だろう。まるで私の今の心境をわかっていたみたいだ。

私の学生時代からの友人、草野芽衣は気の置けない仲で唯一連絡を取り合っている。

適当に空いていそうな居酒屋に入り、飲み物食べ物をあれこれ注文を済ませた後、やはりこの間のパーティーでの出来事を彼女に話す流れになった。勝手にいなくなって心配をかけたのだから、洗いざらい話そうと高城さんと結婚したということも告げると、芽衣は箸でつかんでいた唐揚げをポトリと落として目を丸くした。
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