あなたの家族になりたい

05.妹夫婦と、俺の嫁(仮)

 年が明けて、最初にやってきたのは親父の妹たちだった。

 ……昔は年末から泊まりに来てたが、数年前に親父をブチ切れさせてからは元旦日帰りになった。

 俺としても、お袋や妹が延々イヤミ言われてんの見てるだけでムカつくから、来なくていい。

 澪にもどうせロクなこと言わねえだろ。


「いいか。連中がうちにいる間は俺から離れるな。トイレも付き添うから、言え」

「……はあ……」


 澪はぽかんとしつつも頷く。

 ……意味わかんねえよな。

 俺だってそう思う。

 しかしまあ、予想通りっちゃ予想通り。

 叔母どもは相変わらずだ。

 客間に澪を連れて挨拶に行ったら、満面の笑みで出迎えられた。


「まあ、久しぶりね、瑞希くん。大きくなって」

「そろそろ身を固めたら? うちの娘も年頃だし」

「……ご無沙汰してます。俺、見合いしたの親父から聞いてません? つーか、隣にいるのに見えねえとか、眼科でも紹介しましょうか? 痴呆外来のほうがいいですかね」

「なっ、や、じょ、冗談よ……! こちらが、瑞希くんの奥さん? ふうん。ひんそ」

「こいつ、美園のお嬢さんだから、余計なことは言わねえほうがいいですよ。次、親父を怒らせたら、今度こそ出禁なんじゃないですか?」


 ここまで言って、やっと叔母たちが黙った。

 近くにいる叔母たちの旦那子供はシラッとそっぽを向いている。


 叔母どもが宿泊禁止になったのは、お袋にしつこくイヤミ言ったのと、花音に「行き遅れ」なんてぬかしてたのを親父に見つかったからだ。

 そのとき藤乃呼び出して「須藤家と揉めてえのか」って脅しておいたのに、澪にまで余計なこと言って美園家まで敵に回そうとするのは、さすがにどうかしてる。


「澪、挨拶」

「は、はい。美園澪です。えっと由紀さんのお家でお世話になっております……」

「……瑞希くん、籍は入れてないのよね?」

「なんですか?」

「籍も入れてないのに同棲だなんて、図々しいお嬢さんだわね」

「……懲りないなあ、あんたらも。澪、親父呼んでこい」

「はい……!」

「ちょっ、待っ……」


 腰を浮かす叔母たちを睨む。

 すぐに親父が飛んできたから、事情を説明して俺は客間を出る。

 廊下で澪がオタオタしていた。


「……あの、私、あれくらいなら」

「あほか。ああいうのは最初に黙らせねえとキリがねえんだよ」

「……はい」

「澪。お前がうちの子になりたいって言うなら、ああいう手合いはきっちりやり返して黙らせろ。舐められっぱなしで終わらすな」

「……が、がんばります……」



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