あなたの家族になりたい

02.俺よりペンギンのぬいぐるみのほうが、たぶん優しい

 見合いから数日後、市場からの帰りに車を運転してていた親父が「そういえば」と口を開いた。


「澪ちゃんと仲良くしてるか?」

「みお……? 誰だっけ」

「お前ってやつは……。こないだ見合いしただろうが!」

「あー……忘れてた」

「ふざけんなよ……」

 本当に忘れてた。帰りに写真を送ってそれきり、ほったらかしていた。

「連絡って何すりゃいいんだ?」

「今までの彼女とかには何送ってたんだ?」

「彼女いたことねえし」


 付き合いのある女はいたけど彼女じゃねえ。互いにただの性欲処理……親に言えるわけねえし。


「つーかさ、あのうるせえ母ちゃんから逃がすのはいいけど、なんかすんの? 俺、なんかさせられんの?」

「うちで預かるって言っただろ。来月頭からな」

「聞いてねえ」

「今言った」


 ほんとに適当だな、この親父は!


「近いうちに澪ちゃんのもんでも、一緒に揃えに行け。皿とか箸とか」

「へいへい」


 まあ、荷物持ちくらいなら全然いいけどな。

 スマホを取り出して、相手にメッセージを送る。

 送ったあと、まだ朝の四時だったことに気づいた。


< 5 / 60 >

この作品をシェア

pagetop