あなたの家族になりたい

エピローグーー印をつけておく

 ある夏の昼のこと、昼飯を終えて立ち上がろうとしたらお袋に呼び止められた。

「瑞希、午後空いてる? 澪ちゃんの運転手と荷物持ちをしてほしいの」

「いいけど」

「助かるわ。私、税理士さんのところに行かないといけないのよね。澪ちゃんを農協に連れて行って、そのあと買い出ししてきて」

「よろしくお願いします」

「へいへい。行くときに声かけて」

 澪の頭をぐしゃぐしゃ撫でて立ち上がる。



 しばらくして、澪に呼ばれたから車を出す。
 澪は助手席で書類の確認をしている。

「そういえばお前、免許持ってないんだ?」

「ないんです。欲しいんですけど」

「お袋に言えよ。たぶん金出してくれるから。必要だろ」

「……はいっ」

 やたら嬉しそうに澪は頷いた。……きっと、あの母親に止められてたんだろう。


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