落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜

27 消えた魔力


「え〜! 本当ですの? シャーロット様っ」

 洗濯物を干し終え、からの木桶を抱えて洗濯場に戻ろうとすると、廊下の真ん中でシャーロット様と数人の聖女達が盛り上がっていた。この廊下を通り抜けたいがなんとなく通りづらい。
 シャーロット様にも会いたくないし、遠回りだけど逆の方から行こう。そう思って引き返そうとした時、よく知る人物の名前が耳に入って足を止めた。

「そうですの、ライオネル様とご一緒しましたのよ。とってもお優しくて素敵な方でしたわぁ」

「まぁ! 羨ましいですわ!」

「うふふっ、別れ際にそっと抱きしめてくださったの」

「きゃ〜っ!! それってシャーロット様のことお好きなのでは!?」

「まさかぁ、そんなことありませんわよっ、んふふっ」

 シャーロット様は否定したが、満更でもなさそうに頬を染め笑みを浮かべている。
 身体が凍りついて動けなくなったが、それ以上聞きたくなくてその場を逃げるように離れた。

 再び物干し場まで戻ってくると、さっき干したばかりのリネンのシーツが風にそよいでいる。
 私はその場に座り込んだ。膝に顔を伏せ目を閉じれば、昨日の二人の姿が鮮明に思い出されて、呼吸が苦しくなってくる。あまりもお似合いの二人すぎたから。

「アイリス、どうしたの? 具合でも悪いのかしら?」

 顔を上げるとそこには心配そうに見つめるフェリシティ様がいた。

「フェリシティ様……、どうしてここに?」

「魔法の訓練に付き合おうと思っていたの。そろそろお仕事も終わりだと思って、あなたを探しに来たのよ」

「あ、そうだったんですね、すみません。もう終わりですので、片付けたらすぐ訓練の()に行きます」

「わかったわ、待ってるわね」

 フェリシティ様は笑みを浮かべると、その場を去っていった。
 私は頭に浮かぶ残像を振り払って立ち上がり、先程とは逆の方向へ走り出した。
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